コラム

2003/10/17

「東京都市論」を読む(本・SY)

2003.10.17 【「東京都市論」を読む】

▼日本建設業団体連合会の平島治会長が会見の席上、各記者に1冊の本を紹介した。青山前東京都副知事の著した「東京都市論」という本である。青山氏は東京都入庁後、企画審議室計画部長、政策報道室理事などを歴任。「小説後藤新平」などの作品も発表している

▼「東京都市論」の冒頭に興味深い話がある。東京とパリ共催の都市計画シンポジウムで青山氏が「東京は世界最大の人口をもつ大都市です」と言ったら、パリ市の元都市計画局長がすぐ「パリには4000年の歴史があり、その間の人口を計算すると世界最大の都市です」と反論した

▼通常の人口統計手法で考えると、パリ市元都市計画局長の発言は非現実的だが、フランス人が都市の本質をどう見ているかが分かる象徴的な言葉だ。この発想は同国に限らず、ヨーロッパ全体の都市に対する見方ではないだろうか。その根底には建物の寿命の長さがあることは間違いない

▼ほとんど石造りのヨーロッパの建物は戦災で破壊されない限り数百年、長いものだと千年単位で利用される。古代や中世の歴史上の建造物から住居に至るまで現代の建築物と都市の中で同居している。この都市構造が前述のフランス人をして「本当の人口は過去からの累計である」と言わしめる根拠となっているのではないか

▼日本建設業団体連合会では来年10月を目指し「建設産業ビジョン」をまとめる。「建設産業が発展するためには何が必要か」を改めて問い直す。その中には「都市をどう捉えなおすか」ということも含まれる。歴史的発想はもちろん、環境、防災、治安など課題は多い。成果が期待される。(本・SY)

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