コラム

2003/12/04

好文亭と現代の名工(本・SY)

2003.12.04 【好文亭と現代の名工】

▼金沢の兼六園、岡山の後楽園と並ぶ日本三名園のひとつ水戸・偕楽園。藩内の民衆と偕(とも)に楽しむために水戸藩第9代藩主徳川斉昭公が造園したもので、100種類約3、000本の梅が2月、3月の開花期には多くの観梅客を集める。園内の好文亭は詩歌の会や茶会を催し文字通り偕楽のために建てられた

▼3層づくりの好文亭の1階部分に対古軒(たいこけん)と名づけられた4畳半の部屋がある。好文亭に招かれた客が休んだり、茶席に出る人の控えの間として使われた。その対古軒に斉昭公の詠んだ歌がかかっている。「世をすてて山に入る人山にてもなおうきときはここに来てまし」。この歌は古歌の「世をすてて山に入る人山にてもなおうきときはいづち行くらん」に対して詠まれた

▼斉昭公は幕末の激動期、欧米の外国船の侵入に対する国防の充実を幕府に数度にわたって建言するなど攘夷派としてのイメージが強いが、対古軒の歌からもわかるように民衆への限りない慈しみの心をもった藩主でもあった。好文亭には斉昭公が藩内の80代、90代の高齢者と歓談する間もあり、その人柄が偲ばれる

▼このほど平成15年度卓越した技能者、いわゆる「現代の名工」の表彰式が催されたが、この徳川斉昭公ゆかりの好文亭の改装で優れた技能を発揮した吾妻忠吉氏も今回受賞の150名の1人として坂口力厚生労働大臣から直接表彰状を手渡された

▼建築塗装の木造り磨き塗り、内部木目の色分け塗装の人並み優れた技能が評価された。「素剛優雅な外観は水戸武士の風格が漂う」とも言われる好文亭。その伝統の継承に建設人が関わるのが何故かうれしい。(本・SY)

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