コラム

2003/12/11

古き良き優雅な風習(甲・EO)

2003.12.11 【古き良き優雅な風習】

▼日本相撲の歴史は古く、「古事記」の中で、建御名方神(たけみなかたのかみ)と建御雷神(たけみかづちのかみ)が出雲の国をかけた力くらべをして、建御雷神が勝ったという記述が起源とされる。いわゆる「出雲の国譲り」で、武力によらず平和裡に国譲りが行われた、というものだ

▼こうした伝承の時代に始まり、平安の節会相撲、江戸の勧進相撲を経て、明治維新や敗戦の激動を乗り越え現在の興隆に至る。今では日本の「国技」と称されており、それは日本人の生活や心と密接に結び付いた歴史でもある

▼大相撲11月場所では、大関・栃東が激しい突き押し相撲で横綱・朝青龍を押し出し見事優勝した。その瞬間、場内が騒然となり座布団が飛びかった場面を見た人も多いはず。こうした、観客が座布団を放りなげる「しきたり」はいつごろから定着したのだろうか

▼この習慣は戦前まで、旦那衆の贔屓(ひいき)にしていた若い力士が大手柄をたてたとき、着ていた羽織を脱いで投げ与えたことに始まるらしい。付け人たちは騒ぎが一段落してから散乱した羽織を拾い集め、結びの一番が終わったあと家紋を頼りに持ち主へ届け、御祝儀を受け取る優雅な風習であったといわれる

▼神聖なる土俵へ直接現金を、投げるわけにはいかなかったのだろう。しかし、現在の座布団の乱舞は、ご褒美のメッセージどころか、こうした由来を知らない観客の自己陶酔のようだ。相撲以上の歴史を持つ建設業も、予算やコストの縮減に加えた競争の激化で余裕が無くなり様々な同様の風習を追いやりつつある。古き良きものはいつまでも正しく伝えていきたいものだ。(甲・EO)

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