コラム

2003/12/12

小津安二郎生誕100年(水・KK)

2003.12.12 【小津安二郎生誕100年】

▼きょう2003年12月12日は日本映画界の巨匠・小津安二郎監督生誕からちょうど100年にあたる。昨年末から小津監督ゆかりの東京深川、三重県伊勢市、鎌倉市、尾道市など各地で関係者や有志による記念イベントが続いている

▼小津映画の人気は日本国内にとどまらない。ベルリン、パリ、香港など世界各地の映画祭で小津作品が続々上映されている。ヴィム・ヴェンダース、ジム・ジャームッシュなど小津の影響を受けた監督も多い

▼かくも人々を魅了してやまない小津映画の魅力とは何であろうか。映画評論家や識者によって多くの小津論が書かれている。今さら筆者ごとき浅学非才が云々するのもおこがましいが、あくまで一市民の目線に立った作品づくりと言えるのではないだろうか。畳の上で暮らす日本人の視線に合ったロー・アングル撮影や枕元の目覚し時計や風にひるがえる洗濯物、煙たなびく煙突などのショットも庶民の生活感を等身大で表現する小道具としてBGMとはまた違った心地よさを醸し出す

▼親子の関係を描いた代表作『東京物語』、花嫁とその父との別離をほのぼのとした温かさで表現した『晩春』など彼がテーマとしたものは社会や時代に正面から取り組むような劇的なものではない。市井の平凡な人たちの現実の生活を見つめることにあった

▼小津監督は奇しくも還暦のその日に世を去った。きょうは彼の没後40年の命日にもあたるが、死してなお小津安二郎の評価は高まる一方である。家族や親子の情の大切さを日本人本来の豊かな心と文化で描いた小津作品は時代や洋の東西を問わず普遍のものなのだろう。(水・KK)

厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら