コラム

2003/12/19

旨い漬け物の決め手(甲・TH)

2003.12.19 【旨い漬け物の決め手】

▼デパート内の食品売場で「浅漬けの素」とよばれる商品が陳列されていた。早速、購入し、試してみたところ、立派な浅漬けになっていた。作り方は簡単で、キュウリなどの野菜と浅漬けの原液を袋に入れ、約1時間置くだけ。原液にも、様々な種類があり、糠漬け味、昆布味、鰹味、キムチ味等が手軽に味わえる

▼しかし、子供の頃食べた祖母の漬物とは、やはり違うものだ。祖母の家に遊びにいくと、食卓には必ず漬物が置いてあった。漬物の種類は、奈良漬け、みそ漬け等様々だが、筆者が一番好きだったのはキュウリや茄子、大根の糠漬けだ。その味は、程良く酸味があり、匂いも独特な物であった

▼因みに我が国で一番好まれる漬物は「糠漬け」だそうだ。糠漬けは、米糠に塩を混ぜたものに水を加えてつくった糠床に、好みによって柿の皮、唐辛子、昆布、煮干し等を入れ、これに野菜を入れ漬け込んだもの。特に北九州市の小倉を中心とする地方では、この糠床をとても大切にし、その味を何十年、何百年にも渡り、代々伝えているという

▼糠漬けのうまさの決め手は、第一に糠床の発酵加減である。発酵とは、酵母や細菌の持つ酵素によって生じる化学変化。第二にうまく発酵させるため、平均気温20度以上が必要とされている。第三に最も重要になる糠床をかき回し、新鮮な空気を入れる作業

▼筆者の祖母も毎日、毎日、手間暇かけて糠床をかき回し、必死になって作業していた。数年前、その祖母も他界してしまい、その姿を見ることはできない。このため、祖母が作った温もりのある漬物を食べることが二度と出来なくなってしまった。伝統の味なのだが。(甲・TH)

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