コラム

2004/01/07

1円硬貨の謎について(本・MM)

2004.01.07 【1円硬貨の謎について】

▼名作『たけくらべ』を上梓し、若くして病死した明治の女流作家、樋口一葉の肖像画の原版作成が難航し、新5千円札の発行が今秋にズレ込むという。「しわがないために返って、きれいすぎて、細部が描きにくい」らしい

▼今年登場する予定の福沢諭吉の新1万札、野口英世の新千円札はすでに年末から印刷が始まっている。印刷技術の最高位にある財務省印刷局も、女性の新札登場は初めてというから、美的なこだわりがあるのかもしれない

▼日本には紙幣以外に500円玉などの硬貨も存在する。10円硬貨は自販機、5円硬貨はお賽銭に使われるが、1円玉はほとんど主な用途を見出さない。ところが、1円玉は厚さ1ミリ、直系10ミリ、重さ1グラム規格のため、障子など建築物の隙間や空き具合を計測できるので、昔は物差し替わりになると、重宝がられた。もちろん計りも兼ね備えていた

▼将棋の世界に「歩のない将棋はない」という戒めや「歩のむくい、いずれ金となる」「桂馬の高上がり歩の餌食」といったことわざがある。実力のある「歩」を侮ってはいけない、あるいは歩の時代に実力を蓄えよとの暗示であろうか。弱小でありながら1円玉に共通する何かを持ち合わせているようである

▼計測の原点である1円玉のなり初めを知ったのは、昨年末、全建(全国建設業協会)事務局と八丁堀記者会との忘年会での席上だった。技術畑の事業第一部長の流石(さすが)さんから伝授された。2月には都内で個展を開くという。技術畑でありながら芸術の道にも通じている流石さん。個展の出来栄えも「さすが」だと感心させる腕前なのであろう。(本・MM)

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