コラム

2004/01/22

鬼怒川・大谷紀行(前橋・KM)

2004.01.22 【鬼怒川・大谷紀行】

▼「今年は温泉に泊まり込み現地で応援しよう」と考えていた正月恒例の箱根駅伝。ところが予約しようとした矢先、故郷の足利銀行が破たんし、栃木県鬼怒川の温泉街は深刻な状況と報道された。「少しでも手助けがしたい」。5区11・6?地点の旅館前で浴衣になって応援したい気持ちを抑え鬼怒川温泉へ。大正14年創業という老舗中の老舗に宿泊しテレビ観戦した

▼冷える温泉街などと言われるが、現状はどうなのか支配人に聞いてみると、温泉街の住民の8割が観光で生計を立て、借金の返済に困っている人も多いという。日が暮れてから対岸のホテルを見たが、すべての部屋には灯りがともらなかった。文字通り灯が消えた状態だ

▼鬼怒川からの帰途、宇都宮市内の大谷資料館へ寄った。館内には江戸中期に使っていた大谷石の採掘道具などがパネル展示されている。また、地下約2万?の採石場跡地には美術作品が。わずかな石の隙間から差し込む地上の光は、オブジェを照らし出し幻想的である

▼資料館のそばに第2次世界大戦の戦没者の冥福を祈って建立した平和観音がある。6年がかりで大谷石を手彫りし、昭和29年に完成した高さ26・64mの観音像はまさに荘厳。素晴らしい史跡を残してくれた先人の苦労に思いをはせ、手を合わせた

▼大谷資料館には、当時の採掘作業で掲げていた安全標語が残っている。「聞き流す 安全注意に事故が待つ」。新年早々の慣れない旅行で風邪をひいてしまい、帰りの道中では名文句が身に染みた。新しい経営陣で迎えた16年春の足利銀行。風邪をこじらせないでじっくり治して欲しいものだ。(前橋・KM)

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