コラム

2004/02/19

「最年長記録」と言うこと(前・HI)

2004.02.19 【「最年長記録」と言うこと】

▼建設業に負けるとも劣らない厳しい不況の中に立たされている出版界。「本が売れない」と叫ばれて久しい。今後は電子書籍の普及などにより、さらなる茨の道が待ち受けているが、第130回芥川賞が発表された1月15日以降、受賞者の作品を発刊した出版社には注文が殺到するなど、活気に沸いている

▼今回の芥川賞の注目は、作品はもとより受賞者にもある。これまでの最年少記録を更新したばかりでなく、20歳の金原ひとみさんと19歳の綿矢りささんという若い女性二人の受賞。選考委員の一人、村上龍氏は「作者の年齢ではなく、作品本位の評価」とコメントしたが、石原委員(都知事)は、受賞作について「ものたりない」とバッサリ。若い女性二人による最年少記録については「小説は何歳から書いてもよい」と述べた

▼芥川賞作家の中に森敦がいる。明治45年に生まれ、昭和9年に太宰治らと同人誌「青い花」の創刊にも加わった同氏が長い沈黙を経て、小説「月山」で昭和48年に芥川賞を受賞した時、すでに還暦を過ぎ62歳になっていた

▼同氏は、10年働いては10年遊び、また10年働くというサイクルで人生を送っていた。その中で、電源開発に就職していた頃は、三重県の北山川ダムの建設現場で働いていたこともある。作品に見られる同氏独特の言語使いや世界観は、今なお輝きを失っていない

▼高齢化社会を迎えた現在。これからは最年少記録ばかりではなく、最年長記録に注目してみてはどうか。多方面の分野で、高齢者が活躍できる気運が整えば、社会全体に活気が出る。そして新たな可能性も芽生えてくるかも知れない。(前・HI)

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