コラム

2004/03/13

奥ゆきのある都市(本・SY)

2004.03.13 【奥ゆきのある都市】

▼東京都港区の平成16年度予算案の記者発表である。「最新の統計で、港区の店舗数が2万4、000店になり、新宿区を抜き、23区中第1位になった」と担当の課長が説明。港区には銀座や新宿、池袋、渋谷のような大きな目抜き通りはないが、新橋、青山、六本木など若者に人気のまちがある

▼中でも、新旧市街地が駅を境界に隣接する新橋は港区のパワーが凝縮されている。臨海副都心へ向かう新交通システム「ゆりかもめ」の発着駅を中心に広がる新市街地は旧国鉄の広大な汐留操車場跡地を活用して整備されている。現在も建設中の超高層ビルもあり、西新宿と並ぶ東京の「マンハッタン」である

▼これに対し、新橋の旧市街地には超高層ビルはない。昔ながらの中低層の雑居ビルが多く、オフィスと飲食街が渾然一体となって独特の雰囲気を醸し出している。日中はビジネス街としての顔を見せ、夜になると、ラーメン店やレストランの灯りが1日の仕事を終えたサラリーマンを飲み込んでゆく

▼東京にかぎらず、新旧市街地など2極構造化している都市は歴史の深みを感じさせて趣がある。中国地方の中核都市・広島市はオフィス街となっている駅周辺の市街地と、県庁や市民球場や広島城などのある中心市街地が都市の奥ゆきを形づくっている。市民球場でプロ野球を一度観戦したことがある。古葉監督の広島カープ黄金時代だった

▼市民球場から少し歩くと、平和記念公園と原爆ドームがある。太田川の両岸には桜並木も。そしてお花見の時期には野外練習らしき中高校生の合唱がよく聴こえてきた。心に響く、あの澄んだ歌声は今も聴けるだろうか。(本・SY)

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