コラム

2004/04/28

横綱は木鶏を目指す(本・SY)

2004.04.28 【横綱は木鶏を目指す】

▼昔、闘鶏の名人がいた。ある国の王が自分の飼っている闘鶏の実力を名人に尋ねた。「力を過信して威張っているからまだまだです」と名人は答えた。王は自分の闘鶏を育て直してまた名人に尋ねた。「まだ駄目です。他の鶏の姿を見たり、鳴き声を聞くと興奮します」と名人。しばらくして、王は「もう実力が備わったろう」と催促した。「まだです。血気が盛んです」と認めない

▼その後修行を重ね王は改めて名人に自分の闘鶏のことを尋ねた。すると、今度は「よいでしょう」と名人は承知した。「もう他の鶏の声を聞いても平気です。まるで木で作った鶏としか見えません。どんな鶏がやってきても無敵です」と誉めた。そこで王はその鶏を闘鶏の試合に出すと、相手の鶏は木製のような鶏の姿に畏れをなして、次々と戦わずして引き下がったという

▼この話は「荘子」に出てくる。スポーツの試合などで優勝候補があっけなく敗れることがよくある。人一倍練習を積んで実力随一と言われても、試合直前になると、勝ちを急いで負けるはずのない相手に負けることもある。一瞬で勝負が決まる大相撲などはその好例である

▼不滅の69連勝を打ち立てた横綱双葉山が70連勝ならず安芸の海に敗れたとき、横綱は、欧州旅行の途上でインド洋の船上にいる知人に電報を送った。「ワレイマダモッケイタリエズ」。ある宴席で木鶏(もっけい)の話をしたことのある洋上の知人は、その席に双葉山がいたことを思い出した

▼現在、1人横綱の朝青龍が連勝記録を伸ばしているが、木鶏を目指した大横綱にどこまで近づけるか。もはや精神論という高い次元である。(本・SY)

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