コラム

2004/05/15

植物との距離を考える(前・HM)

2004.05.15 【植物との距離を考える】

▼先日、祖母が青森から横浜にある筆者の実家へ遊びに来た。今年米寿を迎える祖母だが、元気に実家の庭の草むしりに精を出しているという。約2年ぶりに祖母と再会した

▼わざわざ来てくれた祖母に何かしてあげようと思い祖母をドライブに誘った。行き先は、以前一緒に遊びに行った事がある神奈川県三浦市の城ヶ島と決めた。母や妻も一緒に車窓から初夏の太平洋と景勝な海岸線を眺めながら思い出話に花を咲かせた

▼島の頂上には散歩が出来る広場がある。行ってみると南から海風が吹いており、顔を叩きつける風に満足に目も開けていられないような状態だった。それでも海が見えるところまで行ってみようと祖母を囲むようにして、広場へ足を踏み入れると不思議と風がやんだ。松の防風林と群生して生えている笹が柔らかく、風をそっと上方へ逃がしている。音もほとんどない

▼吹き飛ばされそうな風を悠然と受け流す植物の力に改めて感動しながら展望台まで行く。林を出ると再び風である。コンクリート造りの展望台に辿り着き、建物に隠れると風は防げる。しかし今度は壁に跳ね返る風の音が凄い

▼昨今、住宅などで金具や接着剤を使用しない木造工法が見直されたり、法面工でソイルクリート工法、砂防事業ではグリーンベルト整備が行なわれるなど、植物の持つ能力が見直されてきている。祖母との思い出の地で改めてその偉大さを感じる事が出来た。ふと見ると祖母が一束の草を手に歩いている。聞くと葉が食べられるものだと言う。名前も知らない植物だった。大きく広がってしまった植物との距離を縮める事を考えていきたい。(前・HM)

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