コラム

2004/05/21

進む生殖医療遅れる法整備(本・MM)

2004.05.21 【進む生殖医療遅れる法整備】

▼生殖補助医療技術の進歩が目覚ましい。日本産科婦人科学会によると、不妊治療による体外受精児は8万人を超えているという。夫の死後、凍結精子で出産した女性が訴えていたものだが、死後の体外受精は「死者が子供をつくる」という観点から『親子関係は認めない』とする地裁判決が話題になった

▼民法では「父親が死んでから3年以内なら死後認知を提起できる」との条文があるだけ。よもや夫の死後に妊娠・出産するケースまでは想定外だったらしい。裁判長は「何らかの立法措置が必要だ」と指摘した。民法が施行されて105年。家系の正統性重視から子供の利益優先に変遷してきた

▼しかし、卵子は作れても妊娠・出産できない母親が代理出産で生ませた子供さえも、法務省は出生届を不受理のままである。代理出産をめぐっては医療界でもその賛否は2分したまま。ヒトの不妊治療をめぐる体外受精に躍起になっているところに、今度は「オス要らずでマウス誕生」のニュースが波紋を呼んだ

▼凍結しても劣化する恐れがない精子を使わずに、卵子だけを操作してマウスの子どもを誕生させることに成功した。哺乳類の生殖には卵子と精子が欠かせないことは生物の時間で習得済み。オスに関係なく子どもを作ることは「単為生殖」と呼ばれ、昆虫や魚類などで知られているようだ

▼オス要らず生殖にはクローン技術があり、今回の技術はこれに続く第3の生殖らしい。オス要らずでは、子どもはメスしか生まれないようだが、それにしても「オス要らず」とは。存在価値が薄らいでいるのはうっすらと察知していたが、まさかここまできたとは。(本・MM)

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