コラム

2004/05/28

モノづくりを忘れた日本人(水・KK)

2004.05.28 【モノづくりを忘れた日本人】

▼製造立国であったはずの日本から今、モノづくりの精神が失われようとしている。かつて日本が得意とした繊維や軽工業の中心が中国に移ったのはともかく、最近は半導体や液晶さえ韓国や台湾にお株を奪われている。日本の製造業は本社と傘下の協力会社ごと海外に製造拠点を移して日本国内は空洞化、景気は低迷、失業率は5%前後を行き来している

▼過日、子供会の遠足で埼玉県川口市の鋳物工場を見学した。筆者も子どもと一緒に参加したが、ある父兄が汗まみれで働く工員さんを指差し「しっかり勉強しないとあのおじさんみたいになっちゃうよ」と自分の子どもに囁いていた。モノづくりに関わる人の社会的評価の低さを目の当たりにし愕然とし言葉を失った

▼モノをつくるより、モノを売ったほうがはるかに高い利益が得られる。それにスマートで格好いいのだろうか。工学部の学生でさえもがキーボードは叩いても工具は握らないと言われる昨今だ。卒業生は技術者や研究者を嫌って、商社マンになる人が多いと聞く

▼深刻な不況で企業は適材適所などかなぐり捨てて販売オンリー、売り上げ確保に全力を入れる。文系だろうが理系だろうが、外向型だろうが内向型だろうが、全社員セールスマン、全員販売員体制だ

▼かつて日本には匠の技があった。しかし今日、モノを創造する人のステータスはあまりに低すぎる。マスコミは金と人の管理に長けた企業経営者の成功物語ばかりを伝える。そんな風潮がこれからも続けば、熟練技能や創造の知恵を持つ職人やエンジニアは確実に減り続けて、国の根幹を揺るがすことになるかもしれない。(水・KK)

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