コラム

2004/06/03

パソコンの誤入力言語(本・SY)

2004.06.03 【パソコンの誤入力言語】

▼パソコンで原稿をまとめていると、あせるときほど打ち間違いをする。間違って打った言葉は何ら意味をなさないことがほとんどで、すぐ訂正するが、ときどきパソコンを打つ手を止めて、しばし画面に表示された不可思議なな言葉に見入ってしまうことがある

▼今日は「出雲大社」と打つべきところをキーのミスでどういうわけか「イス背も退社」という表示が出てきた。朝から晩まで68?もある中年社員の重力を必死で支えているイスの背もたれを思った。きっと背もたれも定時でその責を終え休みたい日もあるだろう

▼しかし、会社に備え付けの背もたれはそれもできない。人間がすべて退社し、灯りが消えても背もたれはどこか緊張した雰囲気を漂わせ、机の前にすっくと立っている。何年も人間を支えつづけたのだから、「苦あれば楽あり」でバラ色の余生が待っているかというと、そんなことも決してない。「老朽イス」の一言で片付けられ、感謝もされず、廃棄処分されてしまう運命

▼忙しいときにかぎって打ち間違いをするのでメモする間もなく、次から次と忘れ去られてしまう。パソコンを使い始めて既に何年もたつので、「パソコン誤入力言語ノート」を作っておいたら膨大な誤入力数になっていたことだろう

▼パソコンは文字通り計数処理に秀でているが、人間のような柔軟性のある思考はできないと言われる。しかし、誤入力言語はもちろん辞書にも出ていないし、通常の人間の思考回路を逸脱している。これを無価値と見るか、創造的と見るか、見解は人によって異なると思うが、打ち手とパソコンの一瞬の対話であることは確かである。(本・SY)

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