コラム

2004/06/04

キューポラのある街・川口(新・KS)

2004.06.04 【キューポラのある街・川口】

▼埼玉県川口市を舞台に、鋳物師の娘と隣家に住む若い工員の主人公が力強く生きる青年像を主題に描かれた早船ちよ著「キューポラのある街」は荒川を抜きには語れない。吉永小百合さん主演で映画化され、その冒頭シーンは、荒川鉄橋を渡る国電の風景からキューポラ(鋳物を溶かすコークス炉)・こしきの林立する鋳物の街川口の全景から始まる

▼荒川は、甲武信ヶ岳を源流として、埼玉県から東京都東部を流れ、東京湾に注いでいる。都区部を流れる川の中では最も大きい。幾度となく氾濫を繰り返してきた。全長173?のうち22?が人工河川である。総延長22?、幅500mの人工河川・荒川放水路は、明治43年起こった大洪水(東京に甚大な被害を及ぼした)を契機に開削工事が始まった

▼この工事の責任者となった青山士(あおやま・あきら)氏は、パナマ運河建設に携わった唯一の日本人で、この工事の要となる岩淵水門の強度が荒川放水路の成否を分けると考えて、大規模な水門としては我が国最初の鉄筋コンクリート工法を導入。約20年の歳月をかけ、昭和5年に「荒川放水路」は完成した

▼荒川放水路の完成で洪水の恐怖から開放された沿川地域は、鉄道や道路などのインフラが整備され、都市化が進んでいくことになる。小説、映画も「キューポラのある街」は、その過程を描いた名作である

▼公共事業で街ができ、そこに住む人々の憩いの場となった現在の荒川には、年間1400万人もの人々が訪れる。整備されたグラウンドではスポーツをしたり、散歩などを楽しんでいる光景が見られる。事業の成果が顕著にみられる良い例だ。(新・KS)

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