コラム

2004/06/09

戦争をしたくない戦士(本・YN)

2004.06.09 【戦争をしたくない戦士】

▼「どんなに入札制度が変わっても、談合はなくならないよ」。ある営業マンの言葉だ。業界の掟があって、これを破れば数ヶ月は仕事が回ってこないと言う。営業マンがある物件を狙う。受注したい業者は1社だけではない。ここから『材料』集めが始まる

▼前施工業者が最も有力であることは言うまでもないが、『材料』は発注者の首長名刺1枚から設計図書に至るまであらゆるモノが対象となる。挙句の果てには首長の血縁関係から出身校まで調べ上げる。これを営業マンが業務担当者に渡す。内容の深さや信憑性などによって主役が決まる。この一連の流れに逆らえば、仕事に有り付けない。「長く続けられる仕事ではない。もうこんな仕事辞めたいよ」との声も

▼社団法人日本建設機械化協会主催による『最近の機械施工』の映画会に参加した。土工から建築、舗装、浚渫、破砕に至るまで、技術革新とレベルの高さに驚くだけではなく、感銘さえ覚えた。技術とは、当然のことながら工事現場周辺住民の安全、環境への配慮、工期の短縮、コストダウン等までを指す。研究者や技術者の涙ぐましい努力の結晶である

▼にもかかわらず、建設業界を評価する国民は少ない。時間と資金、頭脳を駆使した『世界一の施工技術』を持ちながら「税金のムダ使い」と、ひと言で片付けられては立つ瀬がない。もっと社会貢献度をアピールできないものであろうか

▼いつ摘発されるか分からない仕事を続ける営業マンがポツリと言った。「我々は戦場で戦争をしたくない戦士と同じ」。誰だってリスクを負って『談合』などしたくない。これが本音だろう。(本・YN)

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