コラム

2004/06/16

壁を乗り越える(長・YK)

2004.06.16 【壁を乗り越える】

▼私事で恐縮だが、知人に『内藤さん』という元プロボクサーがいる。正確に言うと妻の知人である。筆者の妻が東京・福生の保育園に勤めていた時、預かっていた2人の女の子の父親が彼なのだ

▼彼が保育園へお迎えに来ると、子供たちは彼の前に列を作る。やにわに彼は両腕に子供を2人ずつぶら下げて、回転ブランコのように回るのだった。子供が好きなのだろう。子供たちの飽くなき要望に応えている。保母が見かねて、声をかけるまでニコニコしながら延々と回っている。「子供はいいよね、本当に宝物だね」と笑いながらつぶやいたのが印象的だった

▼かつて彼は世界王者間違いなしと誰もが認める天才肌のテクニシャンだった。しかし結果的には、彼の優しさがマイナスに作用して世界の頂点には立てなかった。彼については、その昔、歌手の谷村新司氏が彼をイメージして作った曲「チャンピオン」がかなり売れたし、ルポライターの沢木耕太郎氏は彼を題材にした『一瞬の夏』という作品で第1回新田次郎文学賞を獲っている

▼先日、妻とテレビを見ながら彼に関する話になった。私は彼のボクサーとしての才能を語るが、妻にとっては2人の女の子のお父さんでしかない。しかもかなり異色な人だったようで全く会話が成り立たない。ボクシングや相撲の話になると、私と妻の間に養老孟司氏が言う『バカの壁』があるということを否応なく思い知らされる

▼関東地方整備局と各県の建設業協会が意見交換会を開いている。発注者と受注者の間に「何らかの壁」はあるのだろう。それぞれ理由はあるだろうが、乗り越えられない壁では無い。(長・YK)

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