コラム

2004/06/26

建材試験センターにて(本・SY)

2004.06.26 【建材試験センターにて】

▼審査登録機関の(財)建材試験センターで毎月行われるISO認証式の席上、某建設会社の社長さんが「ISOの認証をいただいたケジメに煙草をやめました」と感慨深げに語った。70代半ばだろうか、いかにも戦中派らしく背すじをピンと伸ばし「このたびの認証まことにありがとうございました」と何度もセンターの理事長さんに礼をする

▼「父は保守的に見えて保守的ではないんです」と息子の専務さんが隣りの席で話す。まだパソコンが現在のように普及していない10年ほど前に、社長さんは何か月も夜の2時、3時までマニュアル書片手にパソコンの猛勉強をして、会社の業務に使いこなせるようになる頃にはゲッソリやせてしまったそうである

▼「ISO9001の認証は、社の若い連中がよくやった結果です。私はまったく何もわからんで」と社長さんは謙遜する。でも、その物腰とパソコン猛勉強の話から、社長さんがISOプロジェクトのリーダー的存在であったことはほぼ間違いない

▼その努力家の社長さんが認証式を終えて、センターの理事長と挨拶を交わしたとき、再び「ISOの認証をいただいたケジメに煙草をやめます」と言った。先ほどは「やめました」と過去形だったが、今度は「やめます」と現在形のように聞えた

▼長年、会社の経営で苦労を重ねてきて、今回のISOの取得はひとつの到達点だったのだろう。その記念に、大好きだった煙草をやめる。世界標準が「禁煙」に向かっているのを察しての決断なのか。それとも、何か期するものがあるのか。「若さとは常に目標を持つこと」。社長さんの後ろ姿がそう語っていた。(本・SY)

厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら