コラム

2004/07/08

スーパーフラット(松・JI)

2004.07.08 【スーパーフラット】

▼300万部の売行きとなっている片山恭一著「世界の中心で愛を叫ぶ」。ある評論家は書評で、この作品をクールと述べた。恋人の死に対して極めて冷静で、「悲しい」という感情が記号化され平板であるという。感情や歴史の遠近感を欠いた「スーパーフラット」の領域とのこと

▼スーパーフラットとは、美術家の村上隆が提唱する概念。フラットとは言うものの、彼の作品は平面的な美術ばかりではない。むしろ彼の場合はフィギュアなど立体的なものが有名である。これら造形物でさえもスーパーフラットなのだという

▼つまり作品の形態は問題ではない。遠近法の排除、歴史・時間、感情がなく奥行きに欠ける、平板、余白が多いなど伝統的な日本画と現代アニメーションに共通する特徴だという。最近は、この概念が美術だけでなく文化全般の解説に用いられている

▼「だんご3兄弟」の生みの親・佐藤雅彦氏による毎日新聞紙上のアンケート「日本のスイッチ」が本となって話題だ。この企画は、毎週8つ出される二者択一の質問に対して携帯電話を使って答えるもの。イラクや北朝鮮に関する質問のあとに自動販売機の釣り銭口は低く感じるかなどユーモラスな質問が並ぶ。この企画もやはりスーパーフラットなのだろう

▼もうすぐ参議院選の投票日。初出馬もベテランも相変わらずの選挙運動を展開中だ。ポスターには笑顔と頼もしいコピー。名前を連呼しつつ走りまわるのもいつもの姿。投票率はまたもや低いのだろうか。立候補者の姿も「誰に投票しても同じ」という冷めた有権者の意見も、どちらもスーパーフラットに思えてならないが。(松・JI)

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