コラム

2004/07/21

幸せを運ぶ鳥トキ(前・HM)

2004.07.021 【幸せを運ぶ鳥トキ】

▼古来より幸運を運ぶと伝えられる鳥、 トキがいよいよ自然へ帰る。 環境省によると、 野生復帰のための訓練施設を今年度から3か年をかけて建設する。 総建設費は14・4億円を見込んでおり、 約20万?の敷地内には最大60羽を想定した順化ゲージや繁殖のためのゲージなどを整備する。 20年度から試験的に放鳥を行い、 27年度までに60羽を野生復帰させる計画だ

▼学名ニッポニア・ニッポン。 その美しい薄紅色の羽は朱鷺 (とき) 色と呼ばれる。 20年毎に天皇陛下が天照大神へ奉納する、 琥珀・水晶・瑠璃などで装飾される 「須賀利御太刀」 の柄部分の飾りには1300年前からトキの羽が使われている。 日本人にとってトキは特別な存在だった

▼19世紀、 極東アジアを中心に数100万羽が生息したと言われるこの水鳥は、 乱獲と開発で一時は絶滅寸前に追い込まれた。 中国からの援助もあり、 新潟県佐渡市の 「佐渡トキ保護センター」 では現在48羽のトキが飼育されている

▼訓練施設建設は、 日本の空を再び朱鷺色に染めるための第一歩、 非常に素晴らしい事業だ。 工事に係わる関係者は誇りを持って仕事に挑めるだろう。 トキの野生復帰を願う多くの国民にとっては羨ましい限りだ

▼しかし、 ふと不自然さを感じる一面もある。 トキを野生に返すために人工構造物を作るという点だ。 確かに現況を考えればトキのために絶対に無くてはならない施設だが、 必要とせざるを得ない状況を作ってしまった反省を忘れてはいけないだろう。 人間により絶滅の危機に瀕し、 人間の手で自然に帰るトキ。 我々を許し、 再び幸せを運んでくれる事を願うばかりである。(前・HM)

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