コラム

2004/09/30

母から子への手紙(長・YK)

2004.09.30 【母から子への手紙】

▼筆者が子供の頃、毎年夏になると家族で旅行に出かけた。小旅行に丁度良かったのであろう、行き先は福島県の会津近辺が多かった。大抵は猪苗代湖、磐梯山などを訪ね温泉地に泊まった。猪苗代湖の畔には秋から千円札の顔になる野口英世の生家もある

▼筆者が最後に野口英世の生家を訪ねたのは、まだ親の臑(すね)を囓っている半人前のくせに、何かと親に反発し独立しようともがいていた頃だ。休日を利用して友人達と福島から宮城、山形へと二輪車で廻っている時に立ち寄った。筆者は特に見るものは無いと思って入館するつもりはなかった

▼しかし折角だからと友人に誘われ入館し「やはり何もないな」と思って出ようとした時、母(シカ)から息子(英世)への手紙が目に入った。老母が米国に暮らす我が子に会いたい一心で書いた誤字脱字だらけ、かつ平仮名と片仮名が混ざった読みにくい手紙である

▼その手紙は子供の頃にも見たはずだが、何の印象も無かった。しかし大人になってから読むと胸に迫るものがあった。近くにいた白髪混じりの紳士が目を赤くして見入っていたのを今でも覚えている。特に『はやくきてくたされ○はやくきてくたされ』の一節には切ないまでの母の愛を感じる。恥ずかしながら筆者は、この手紙をきっかけに母親への態度が急に変わったものだ

▼猪苗代町絆づくり実行委員会は毎年「母から子への手紙コンテスト」を実施し、今年も9月30日まで手紙を募集している。毎年素晴らしい手紙が紹介され、昨年は幻冬舎が心温まる一冊の本にまとめた。仕事が終わったらも久しぶりに母に電話でもしてみようと思う。(長・YK)

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