コラム

2004/09/01

五輪施設への想い(さ・YW)

2004.09.01 【五輪施設への想い】

▼日本人選手の大活で終ったアテネオリンピック。突貫工事、選手村の部屋の鍵が壊れた、プールの屋根が間に合わなかったなど舞台裏の隠れたエピソードも多かった

▼これまでローマのオリンピコ、ミュンヘンのオリンピックシュタディオン等へ何度か訪れる機会があった。中でも最も印象深いのはまだ記憶に新しいスペイン、バルセロナのモンジュイックの丘だ。それは日本人建築家の磯崎新氏が屋内運動施設の設計を、国際コンペで採用された施設であった

▼第一印象は正面から見てすぐ寺院ではないかと感じてしまう。それは寺院の伽藍の外観、正面の広場にはオブジェが立つこと等による。実はそのオブジェこそ線香とそこから出る煙をイメージしたものだ。屋内運動施設と周辺の空間を一体化し日本独特の仏教文化の空間を表現した磯崎氏ならではの発想だった

▼このような施設に宗教観とその活動に係る空間を同時に表現することは極めて稀である。それが宗教文化の異なるヨーロッパの国、それもオリンピックというバルセロナ市の名誉をかけた施設でその発想が認められることは異例なことだ。同時にてらうことない奇抜な発想を具現化する能力、そして卓越した説得力を生む磯崎氏が改めて評価される

▼そもそもスペインでは画家ダリ、ピカソ、建築家ガウディら発想が奇抜で、一般人では理解ができず何を表現しているか分かりにくい芸術家が輩出している。時代を超えてバルセロナとは奇抜、発想、表現にこだわり国境を越えたものを評価する寛容さも身につけているのだろう。施設は時代背景などの歴史も刻まれる貴重な資産だ。(さ・YW)

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