コラム

2004/09/14

本質は原作にこそある(水・YH)

2004.09.14 【本質は原作にこそある】

▼昭和13年初版、15年には100万部、遂に16年には300万を越えた。ご存じの片山恭一著『世界の中心で、愛をさけぶ』が国内作家の小説単行本の最多記録を更新中だ

▼作家・片氏は昭和34年愛知県宇和島生まれ。昭和61年九州大学院在学中に「気配」で文学新人賞受賞した。『世界の中心で・・・』は直木賞を受賞した等の経緯もなく、ひたすら小説の主題で日本中を涙で覆った話題作である。高校生の純愛ストーリーだ

▼しかし、小説、TV、映画が余りにも各様なため、原作からかけ離れてしまい、違和感を覚えている。小説がベストセラーになったことに相乗りするように映画化、TVドラマ化する。当然、二番煎じ、三番煎じで視聴率を稼ごうとするためテーマから逸脱し誇張される。原作を読んでいない視聴者はそのシチュエーションが正しいものとなってしまう。いかがなものだろうか

▼なかにはドラマの方が原作より評判を得るといったことも多いが。一例だが中里介山著『大菩薩峠』、吉川英治著『宮本武蔵』などは小説でも映画でも歴史を刻んでいる。石坂洋次郎の『青い山脈』などは何度映画化されているだろうか。私観だが昭和24年放映された原節子や池部良らが出演した作品が秀逸

▼出版科学研究によれば今年度上期の出版物総売上が対前年度同期比で1・0%増の1兆1395億円で1997年以来7年ぶりにプラスになったとしている。『世界の中心・・・』や芥川賞受賞作の『蹴りたい背中』などいわゆる若者向けの作品がヒットした背景がある。価値観は多様だが、すべからく本質は原作にあることを見逃してはなるまい。(水・YH)

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