コラム

2004/10/23

愛され続ける建築物(前・HM)

2004.10.23 【愛され続ける建築物】

▼先日、格闘技者にとって「聖地」と言われる後楽園ホールでボクシングを観戦した。初めて行くホールは、10年以上ボクシングを見てきた筆者にとっても、憧れの「聖地」だ。ファンがごったがえす独特の雰囲気を堪能したうえ、メインイベントでは、贔屓の選手が圧倒的な強さで勝利、大満足で帰路についた

▼後楽園ホールはこれといって特徴のない外見上は普通のビル。ホールは、その最上階である5階に設置されている。外から見ると「この中でプロレスやボクシングを?」とちょっと意外な感じだ

▼エレベーターを降り会場への階段を上がるとすぐ目の前がリング。「近い」というのが第一印象だ。会場には意外と女性客も多く、年配の方や親子連れなど客層は幅広い。2000人も入らない会場は、どの席からでもリングがよく見え、試合の打撃音もはっきり聞こえる。大会場でボクシング観戦をした事があるが、これほど選手と一体感を感じられる会場はなかった。1962年にオープンして以来、40年以上にわたって聖地であり続けたのもうなずける

▼建築物としてホールを見たとき、実に特徴のない、極めてシンプルな造りである事にも気付く。外部にも内部にも凝った箇所はない。余計なものを作らずに、ファンの事を第一に考えた本当に観戦しやすい空間が愛され続けた理由だろうか

▼帰りはエレベーターではなく、階段を使ってみた。壁一面に落書きがある。そこには、よく見ると何年も前の選手の名前もあり、別な意味での記録でもある。ファンと共に年齢を重ねる建築物、これからもさまざまなドラマを生み続けてほしいものだ。(前・HM)

厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら