コラム

2004/11/11

プーさんのあつかい(長・EM)

2004.11.11 【プーさんのあつかい】

▼1歳を過ぎた娘。ひとり歩きを覚え俄然あわただしい。目当てを付けてはひょこひょこと進み、時にぱたりと倒れる。かと思えば目先のごみを拾い上げぱくり。向う先を忘れきゃっきゃと笑い、叱る声にも耳を貸さない

▼「生きるとは手をのばすこと幼子(おさなご)の指がプーさんの鼻をつかめり」。歌人・俵万智さんが生まれたばかりの長男との日々を詠んだ一首。なるほど、好奇心が服を着た、思いのまま遂げようとするあの様が、まさに生きるということなのかとひとり合点している

▼全国市民オンブズマン連絡会議による都道府県の15年度落札率調査で最低率となった長野県。公共事業の減少に加え、地域要件を大幅に緩和した独自の入札制度により安値受注が止まらない。本年度上半期の県発注工事平均落札率は72%。業者はきょう明日をしのぐため止むを得ず低価格入札を続ける。無論、採算を度外視した受注では一息つけるはずもなく、いつ終わるとも知れない悪循環。しわ寄せは下請け、孫請けへと及び、倒産が続出する

▼共存共栄の時代も今は昔。しかし、行過ぎた過当競争は地域に根差し、秀でた技術力を持つ業者をも駆逐する。地元企業の育成はもちろん、安全管理や品質管理すら危ぶまれる現状。改めるべきは安値受注を続ける業者ではなく、導いた制度そのもの

▼俵さんはこれからも我が子に歌を詠み聞かせるであろう。自我が育ったそのあとで、他を思う気持ちが芽生えた子へ詠む秀作を待ちたい。筆者も一首。「生きるとは手をつなぐこと幼子が隣人にプーさんをひょいとさしだし」。自治体と業界一丸となって事に当たりたい。(長・EM)

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