コラム

2004/11/17

そこから何が見える(長・EM)

2004.11.17 【そこから何が見える】

▼1歳を過ぎた娘の千鳥足をなぞるのが日課となってしばらく経つ。過当競争が続く公共事業の入札よろしく、追うほどに逃げていく。ころんで泣くのはあなたのほう。かがんで、時に四つん這いで廻るうちに気付いたのは、あまた落ちているちりやほこり。几帳面できれい好き、典型的なA型を自負していたが、文字どおり目先を変えれば世界が変わる

▼ひとしきり探検を終え、ようやく寝入った彼女を起こさないようそっと窓を明けた。凛とした空気となつかしく物悲しい香り。夜更け前、街並みに色は無いのに、そこにはっきりと冬の息吹を感じる。少し落ち込みながらも、人の五感の素晴らしさを再認識

▼緊縮財政による建設投資の削減で、新分野や異業種への参入に対する機運が高まっている。環境、高齢化、リフォームといった「有望」とされる市場のほか、農業や林業へと足を踏み出した者も数多い。もちろん、五感のように見えなければ嗅いで、聞こえなければ触れて、とすんなり事が運ぶことは稀。本業を後押しするにはいくばくかの時間がかかりそうだ

▼度重なる天災に打ちひしがれた日本列島。被災者のみならず皆が磐石な生活基盤の確立を切望している。この思いを具現する手段こそが公共事業であり、建設業に課せられた使命である。偏見を洗い流すには余りあるほどの涙雨が降ったであろうに

▼たゆまずひたむきに研鑚を続けること同様、新たな取り組みへと帆を張ることも必要とされる時代だ。時に見上げ、時に伏せ、その先に見えるものは何だろうか。まばゆく光る錦色の道か、それともほこりのかたまりか。そこから何が見える? (長・EM)

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