コラム

2004/12/03

自然のスポークスマン(前・HI)

2004.12.03 【自然のスポークスマン】

▼現代の日本を代表するアルピニストの名塚秀二さんが、ヒマラヤのアンナプルナー峰で雪崩に遭い亡くなった。世界には8000m峰が14座あり、日本人の持つ登頂記録は9座12回。名塚さんの今回の登山は、この記録の更新がかかっていた

▼筆者が高校の山岳部に在籍していた時、尾瀬で行った冬山合宿で、名塚さんの講演を聞いた。名塚さんは、尾瀬との出会い、冬山の美しさと恐ろしさを体験に基づき淡々と話した。強く印象に残っているのは、聴講した全員の熱心に聞く姿だった

▼アルプスやヒマラヤのような高所に行くと、地球温暖化の影響が顕著に表れているという。アルプス山頂にはロープウェイの駅舎など永久凍土帯に造られている建造物も多く、永久凍土の融解は災害につながる。また、氷河が溶けて出来た氷河湖の決壊による洪水被害もあり、そうした自然災害の頻度が増加傾向にあるとする指摘もある

▼アルピニストに野口健氏がいる。野口氏は7大陸最高峰の登頂最年少記録(25歳)を持っているが、その後は、エベレストの清掃登山のほか、富士山や樹海の清掃登山を行っている。女性として世界で初めてエベレストに登頂した田部井淳子さんは、ヒマラヤのゴミ問題で修士論文を書き、山岳環境保護団体の中心としても活躍する

▼アルピニストは、日常の生活では得られない様々な体験をしている。そのため人としての純粋な哲学がある。第一線で活躍するアルピニストは山の声を聞き、そして語る「自然のスポークスマン」ともいえる。アルピニストが遭難死との報に接すると、悲しみとともに、残念という印象を強く抱いてしまう。(前・HI)

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