コラム

2004/12/08

「つくる・つたえる」(甲・KY)

2004.12.08 【つくる・つたえる】

▼20年ぶりにデザインを一新した1万円札、5千円札、千円札の新紙幣を、最近ようやく手にした。新紙幣には世界最先端の偽造防止技術が採用されている。見る角度により光る模様が変化する「ホログラム」や光にかざすと印刷された模様の背後に縦棒が透けて見える「すき入れバーパターン」等、その薄い一枚の紙に込められた印刷技術の粋に驚く

▼紙幣の製造を担当する国立印刷局には「工芸官」という専門職員がいて、紙幣のデザインや原版作成にあたる。細かい彫刻を施す原版の作成は熟練の手彫りによる作業で、この技術を一通りマスターするのに20年程かかると言われる。この重要な「技術の伝承」も、戦後ほぼ20年ごとに行われてきた紙幣更新の理由のひとつだそうだ

▼同じく20年ごとに更新されるもので伊勢神宮(三重県)の「式年遷宮」がある。今から1300年前の天武天皇の時代から続く制度で、御正殿など全ての社殿を20年ごとに同じ形で新しく建て直し新しい正殿に御神体を遷す

▼この制度によって伊勢神宮は「唯一神明造」と呼ばれ日本最古の神社建築の様式を現在に伝える。重要な目的の一つとして、これもまた古来の建築技術の継承や宮大工の育成など「技術の伝承」があるとされる

▼建設業界においては公共事業の削減などによる影響で事業量が激減している。技術の伝承は現場あってのもの。工事の絶対量が減れば、培われた技術が活躍の場を失い技術力が弱まることも懸念される。土木や建築は文明とともに誕生、発展してきた数千年の歴史をもつ技術。この技術をいかに伝承していくかが今後の大きな課題ではなかろうか。(甲・KY)

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