コラム

2005/03/19

新たな需要の創出(松・JI)

2005.03.19 【新たな需要の創出】

▼知人の楽器商によると、中学校・高校の吹奏学部の多くは練習が厳しいらしい。細かい指導、先輩後輩の上下関係、中には体育会系顔負けのランニングを課すところもある。辛くて逃げ出す子供も少なくないとのこと。退部した彼らは、以降音楽をやらないという

▼管楽器は高価であり、買い与えた親も嘆いている。そこで楽器商の彼は、挫折した子供たちの音楽回帰を目指してジュニアビッグバンドを立ち上げた。演奏曲はすべてジャズ。ステージ発表のためには練習は厳しくなるが、それ以上に音楽の楽しさを味わってほしいとの願いが彼にはある

▼ジュニアビッグバンドの練習は、彼自身も所属する30代中心の社会人ビッグバンドが指導にあたる。子供たちは将来、この社会人バンドに入団することになる。一度は逃げた子供たちだが、これからは大人になっても演奏活動を続けることができるだろう

▼さて楽器商としても、ボランティアで設立したわけではない。メリットがなければ会社を説得して練習場所を確保することはできないのである。彼によれば地域の音楽人口及び顧客数の増加が見込めるという。楽器の新規購入・買い替え、修理をすべて請け負うことができ、バンドが活躍すれば入団希望者も増えて購入につながると考えている

▼ライバル社との熾烈なシェア争いは楽器店にもあるが、今回のケースは環境づくりによる新たな需要の創出である。まだその効果は見えていないが、一企業の可能性を広げたと言っても過言ではない。彼は「次はシニアビッグバンド」と宣言している。こうした情熱こそ、厳しい場面で必ずや突破口となるものだ。(松・JI)

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