コラム

2005/04/13

東京の街並み今昔(本・SY)

2005.04.13 【東京の街並み今昔】

▼東京建設業協会の広報誌「TOKEN」には東京の街並みの今昔を写真と解説記事でまとめている「シリーズTOKYO・界隈」が掲載されており、関係者に好評である。その最新号には「銀座の街の今昔」が載っている。執筆者は建設産業史家の菊岡倶也氏

▼その中で特に印象深かったのは、「戦後日本の思い出」と題するドナルド・リチー氏の引用文である。同氏は日本映画を世界に紹介するパイオニアの役割を果たした人物で、戦後は占領軍の兵士として東京に来ていた

▼リチー氏は1947年の冬、銀座4丁目の交差点に立って、富士山の姿が夕闇に消えていくのを見守っていた。「江戸時代このかた、あの場所から富士山が見える筈はなかったのだ。だが今は建造物が全部消えてしまって、私と富士山を隔てるものは、焼け尽くされた荒れ地だけしかなく(中略)大きなビルで残っているのは2棟だけだ。三越百貨店の銀座店は焼夷弾の直撃を受けて、外壁こそ辛うじて立ってはいるものの、中身は焼け落ちて、窓枠は灼熱で歪み放題の有様だ」

▼信じ難い光景だが、60年ほど前の東京・銀座はこのとおりだった。「かつては東洋の神秘といわれた銀座の光の噴流は何処へ」とリチー氏は慨嘆する。この光景は銀座だけでなく、全国の多くの街並みが「体験」したものである

▼現在の銀座には戦後復興した老舗をはじめ、外国のブランド店など新旧の個性的な建築物が軒を連ねている。「現在の姿にまでなったのは建設人の知恵と汗の結晶」と執筆者の菊岡氏。時間はかかるが、東京だけでなく全国の街並みの今昔を少しでも多く調べたいと思った。(本・SY)

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