コラム

2005/05/25

技術と人の距離(甲・KY)

2005.05.25 【技術と人の距離】

▼「プシュー、プシューゴッー」。その音とともに吐き出される煙を見て、興奮が止まない近く2歳になる筆者の息子。ゴールデンウィークの連休を利用して家族で静岡県の大井川鉄道にSLを見に行った

▼鉄道初期に活躍した蒸気機関車(通称SL)を定期運行する大井川鉄道には、鉄道そのものを観光の目的に多くの人が訪れる。大井川に沿った谷あいに汽笛を鳴らし、白煙と時折黒い煙を交えながら走るSLの勇壮な走りは周囲の景色と相まって日常とは異なる時空間を体験できる

▼のどかな光景を目にしながらも頭によぎるのは、兵庫県尼崎市内のJR福知山線の痛ましい脱線事故。電車に乗り合わせた107人の尊い命が失われた。運転手が電車の遅れを取り戻そうと、スピードを出しすぎたことが事故の原因と見られている。安全な乗り物とされる鉄道がこのような多数の犠牲者を出す事故を引き起こし得るということを再認識させられた。ただ、高度な安全技術も人が関わる以上、ミスは必ず発生する可能性はある。SLの時代と比べ高速化なども著しく進んだことで、一度事故が発生するとその被害も甚大になる

▼技術を高度化し、その恩恵を享受する一方で、我々は、技術に伴い発生しうる危機に対する創造力と意識を高めていかねばならない。最近問題となっている顧客情報等の流出などの事件も、その多くは情報を管理する企業内部からの流出など人為的なものだ

▼現状では、我々の意識が急速に進歩する技術に追いついていないように感じる。利益優先の企業体質がそうした矛盾を助長する。すべて人の命が最優先することを再確認したい。(甲・KY)

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