コラム

2005/06/08

世界遺産「原爆ドーム」(本・MM)

2005.06.08 【世界遺産「原爆ドーム」】

▼日本には12の世界遺産がある。候補地も数箇所に のぼる。ユネスコに登録される世界遺産は、世界の貴重な文化財や自然を人類共通の財産として保護し、保全する国際的な制度である

▼特質な文明や芸術、建築様式、景観などを基準に選定されるのが大半だ。しかし、これらの条件に全く属さない負の遺産とも呼ぶべきものが、日本に1つだけ登録されている。広島の原爆ドームがそれだ。これは原爆による残骸そのものである。正式名は「ヒロシマ・ピース・メモリアル」

▼たった1つの原爆で一瞬にして10万もの人々が消えた。あれから60年が過ぎた。原爆ドームは平和を祈る象徴として、人類の犯した殺りくと破壊の歴史を永遠に伝え継ぐために、投下した米国の反対を抑えて、世界から認められたものである。2度と過ちを起こさないように、と願って登録されたものだ

▼当時広島市は西日本の軍事上の中枢を担っていたために、10候補の第1標的にされてしまった。もともと原爆ドームは広島県産業奨励館という物産展示場だった。爆風と火災によって死骸化された。原爆ドームの名は、だれ言うとなく定着していったものだと観光ガイドから聞かされた

▼広島は人類史上初のウラン原子爆弾が、3日後の長崎にはプルトニウム爆弾が投下された。原爆の威力を試す、黄色人種に向けた実験台とは思いたくはないが、1国に2発の投下は後にも先にもない事実である。人類はいまも、殺りくと破壊の歴史を繰り返している。広島の原爆慰霊碑には「安らかに眠って下さい。過ちは繰返しませぬから」と刻まれている。これに主語は無い。大きな言葉だ。(本・MM)

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