コラム

2005/06/11

鴎外、津和野から千駄木へ(本・MM)

2005.06.11 【鴎外、津和野から千駄木へ】

▼山陰の小京都と呼ばれる津和野(島根県)は、国の指定史跡のためか、歴史と文化の息吹に包まれた町である。江戸時代初期の津和野藩主は、徳川家康の孫娘「千姫」を欲しがった坂崎出羽守(さかざきでわのかみ)だった

▼小説家の森鴎外、思想家の西周(にしあまね)を生んだ文人たちのふるさとでもある。2人とも偶然に医師の家に生まれ、なおかつ親戚関係にあった。森鴎外はいわずと知れた夏目漱石と並び称せられる明治の2大文豪の1人。西周は幕末期から明治初期に活躍した主観や客観などの訳語を作った啓蒙思想家

▼テレビのサスペンスドラマ『〇〇殺人事件』には必ず「死に場所」が設定されている名所がある。この津和野も例外ではない。武家屋敷跡が連なる「殿町通り」が、その設定場所である。この場所とともに森鴎外の旧宅を、ガイドの案内で訪れた。南側には森鴎外記念館も見える

▼観光案内人は「ただいま森鴎外さんは東京に出張中で留守をしています」とのジョークを飛ばしながら、鴎外の「人となり」を説明し観客をなごませる。多感な時期を過ごした鴎外は、東京の文京区千駄木を棲み家に、陸軍医師の仕事と自らの小説を業務とした

▼千駄木には明治時代の森鴎外の活躍を記録した「文京区立鴎外記念本郷図書館」がある。鴎外は明治25年(1892年)団子坂の上に住まいを構えた。団子坂は別名潮見坂とも呼ばれた。品川の海が見えたらしく、この家の2階を観潮楼(かんちょうろう)と命名。ここで『青年』『雁』『阿部一族』などの作品をつむいだ。鴎外記念図書館のほぼ、はす向かいに弊紙の本社がある。(本・MM)

厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら