コラム

2005/06/25

技術を維持するために(前H・I)

2005.06.25 【技術を維持するために】

▼15年ぶりに野球ボールを握りキャッチボールをした。野球少年だった当時、毎日ボールを握るその手はマメだらけで、指先や手のひらの一部は皮膚が硬化していた。今ではすっかり、きれい(?)な手に変わったが、相手の構えるグローブに投げたつもりが、頭上に高く浮いてしまった

▼病院のベッドに長い間、臥せっていたことがある。それも絶対安静のため、ベッドから一歩も離れることができなかった。入院から2週間後、医師の許可を得て、久しぶりにベッドから離れ立とうとすると、力が入らず、腰から崩れ落ちてしまい、歩くどころか立つことさえできなかった

▼また、別の経験では、2か月間ほど、自らの手で文字を書かない生活を送ったことがある。2か月後、ペンの持ち方さえ覚束ない手で力の入れ加減が分からず、ペン先が震え、簡単な文字も満足に書けなかったこともあった。不甲斐ない思いをした

▼「継続は力なり」「好きこそ物の上手なれ」という諺がある。これは裏を返せば、「継続しないと力にならない」「好きにならないと上手にならない」と言い換えても当てはまるのではないだろうか。必要のないものは退化する。必要なものや技術も、それを維持する努力を怠れば、たちまち衰えてしまう

▼「歩く」「書く」という日常的な営みさえ、その行為をわずかな期間、途絶えただけで、不自由になる。来年度の公共投資も、引き続き抑制する方針が固まった。すでに景気対策のため大幅な追加が行われていた以前の水準に達したとする声も強い。社会基盤整備の技術を継承するために、必要な予算まで削られることのないよう願うばかりだ。(前H・I)

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