コラム

2005/08/12

戦陣訓は生きている? (水・KK)

2005.08.12 【戦陣訓は生きている?】

▼また、終戦の日がやって来る。今年は終戦60年。人は何十周年という節目を迎えたとき、その意味を問い直し、そこに今を生きるよすがを求める。多くの日本人にとって、今年の8月15日は感慨ひとしおだろう

▼太平洋戦争は日本の軍人、軍属そして民間人に甚大な犠牲と筆舌に尽くし難い苦しみを与えた。なぜ被害を最小限に1日も早い幕引きができなかったのか。日本人をがんじがらめにした要因のひとつに「戦陣訓」がある

▼大陸での戦闘が長期化する昭和12年の日華事変、昭和14年のノモンハン事件あたりから、かなりの数の日本兵が捕虜になった。「生きて虜囚の辱を受けず」で知られる昭和16年1月8日示達の「戦陣訓」は将兵の士気を鼓舞したことも事実だが、戦陣訓に従う限りでは勝利の見込みのなくなった将兵は自決するか玉砕するかの道を選ばざるをえなかった。欧米諸国では捕虜になっても、それ以前に武功があった者は英雄として評価された

▼戦陣訓の呪縛はアッツ島やガダルカナル島などで玉砕した日本軍将兵ばかりでなく、民間人の犠牲も多くした。サイパンや沖縄などで多くの非戦闘員が非業の最期を遂げた。また捕らえた捕虜を不当に虐待したとして1000人近くの軍人、軍属がBC級戦犯として処刑されるという悲劇も見逃せない

▼戦後復興から今日まで、日本人の勤勉さこそが日本を支えてきた。しかし近年、過労死、過労自殺が社会問題になっている。脳や手足に障害を負う人も少なくない。勤労は美徳ではある。「艱難汝を玉にす」は真実であるが、「過ぎたる艱難は人をボロきれにする」と、もいえるかも知れない。(水・KK)

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