コラム

2005/08/25

古いものを使おう(前・HM)

2005.08.25 【古いものを使おう】

▼最近、歴史的建造物を見る機会が続いた。江戸時代の元武家屋敷や明治時代の擬洋風建築、それぞれ個性的だが、中でも印象に残った群馬県館林市内にある正田醤油?の社屋だ

▼この建物は、100年以上前に建てられ、最初は工場、次に倉庫として利用されていたものを改修した。「使えるものは極力使う」という考えのもと、古い柱材や梁材などが多数利用されている。しかも醤油工場だったため、木材の表面を麹菌が覆っており、これが他のカビなどの侵入を防ぎ、保存状態が非常に良く、ほとんどの木材が再利用可能だった

▼内部は事務所のほか、ホールなども設置され、地域住民も利用できる施設となっている。広いガラス面からは日光が差し込み、明るく清潔感溢れる空間が創り出されている。一方で、黒みがかった柱や梁、古い瓦などは「歴史的建造物」の雰囲気を十分に残しており、新古が融合した素晴らしい建物になっている

▼最近は、古い建物を利活用していこうという考えが一般的になりつつあるようだ。確かに保存するだけでは、それは延命策でしかない。新たな建物として命を吹き込む事で、その建物の価値が最大限に発揮される。正田醤油の社屋を見ていると「リフォーム」ではなく「リボーン」という言葉が浮かんでくる。まさしく生まれ変わったのだ

▼今、筆者の机の上には木のコースターが乗っている。正田醤油の柱材を調査した機関から、柱材の切れ端をもらってきたものだ。「古いものを残そう」とするのも大切だ。しかし「古いものを使おう」という精神も必要ではないだろか。すべからく、偏見は広がりを阻害する。(前・HM)

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