コラム

2005/09/17

鈴虫の声と情報化(甲府・KY)

2005.09.17 【鈴虫の声と情報化】

▼うだるような暑い夏も過ぎ、気が付けば夕暮れ時の凛とした風に、夏から秋へと季節の移ろいを感じるこの頃。日も暮れて辺りが暗くなると、自宅近くにある草むらから虫の声が聞こえる

▼秋の虫の代名詞といえば鈴虫。リーン、リーンと心地良い音で鳴くのはオス。羽を垂直に立て、上羽の内側と下羽の外側にあるぎざぎざのやすりを小きざみに震わせ、擦り合わせた時の羽音が鳴き声の正体だ

▼この鈴虫の音は電話を通すと聞こえないというのは有名な話。電話では一定以上の高音、つまり周波数(1秒間に振動する回数)がある一定の幅を超えると音が伝わらない。一般電話や携帯電話など電話を通して聞こえる周波数の範囲は300〜3400ヘルツといわれるが、鈴虫の音は4000ヘルツ以上の高い音なので、電話を通しては聞こえない

▼ただ、この話もすでに過去のものとなりつつあるようだ。50ヘルツ〜7000ヘルツという広い周波数帯域の通話が、一部のIP電話では可能となった。日常の生活のなかで我々が耳にする音は随分多様になってきた。情報としての音もあれば、単なるノイズとしての音もある。また、ある人にとっては情報を伝える音であっても、他の人には単なる雑音、または騒音に聞こえるということもある

▼情報が多様化するなかで音の発信者側の配慮も勿論だが、受け手側も様々な音のなかから、情報を取捨選択する能力も求められる。鈴虫の鳴き音には、オスからメスに対する求愛という大切な情報が込められている。その音を心地良く感じるのは、知らぬ間にその音に共鳴しているからに他ならない。しみじみと。(甲府・KY)

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