コラム

2005/10/29

時空を越えた旅へ(新・KS)

2005.10.29 【時空を越えた旅へ】

▼あまりにもいい天気だったので、柄にもなく部屋の片付けをした。埃の中から学生時代に読んだ小説、何回となく聴いたレコードなどがあまた出てきた。懐かしさのあまり、それらを手にとり、しばし思い出に浸った

▼「JR中央線の快速電車の車輌が来年、27年ぶりに全て新型に変わる」と言う。そう言えば、さだまさしが作詞・作曲し、そして歌った「檸檬」(レモン)という曲のフレーズには「食べかけの檸檬聖石橋から放る快速電車の赤い色がそれとすれ違う」とJR中央線が登場している。今度はシルバーにオレンジ色のラインが入った車輌になるようだ

▼福沢諭吉の門人であった早矢仕有的(はやしゆうてき=ハヤシライスの考案者といわれる)が創業した丸善(創業時名=丸屋商社)を舞台にした小説に「檸檬」がある。作家・梶井基次郎は、作中で当時の丸善を次のように登場させるほど丸善京都店をこよなく愛していた。「見わたすと、その檸檬の色彩はガチャガチャした色の階調をひっそりと紡錘形の身体の中へ吸収してしまって、カーンとさえかえっていた。私には埃っぽい丸善の中の空気が、その檸檬の周囲だけ変に緊張しているような気がした」

▼その丸善が、創業130周年の記念に限定生産した、幻の万年筆「檸檬」。発売と同時に瞬く間に売り切れてしまった。購入できず、残念な思いをしたが、ミニサイズで復刻され雑誌の付録になることを知り思わず書店に走った

▼秋も足場やに深まりつつある中、紅葉を求めて旅をするのもいい。また、ささやかな喜びに出会うため、一人静かに時空を超えて彷徨ってみるのも、一興である。(新・KS)

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