コラム

2005/10/12

人を感動させる技術力(前・HM)

2005.10.12 【人を感動させる技術力】

▼猛暑だった夏も過ぎ、ジメジメとした蒸し暑さは消え、爽やかな風が気持ちいい。そんな気候に誘われるように、近くの公園へ遊びに行った。そこは、芝生広場のほかに、美術館、歴史博物館も併設されており、一日中でも飽きずに楽しめる。その博物館で、たまたま日本刀の展示会を覗いた

▼古くは鎌倉時代のものから江戸時代末期、そして現在のものまで所狭しと並べられた武士の魂。作られてから800年近く経っている古刀も、いまだ輝きを失わず、冷たい光を放っている。人を斬るという目的のために作られた日本刀だが、極限まで高められた完成度は、妖しい美しさも併せ持つ。吸い寄せられるように魅入ってしまった

▼一口に「日本刀」といっても、時代によって、また長さなどによって色々と区分されている。例えば、「刀(かたな)」と「太刀(たち)」の違い。どちらも刃長は2尺以上と共通だが、刀は刃を上にして腰に差すもの、太刀は刃を下に腰にはくものとする

▼さて、そんな日本刀を作るには、「たたら製鉄」で作られた鉄が不可欠だ。たたらは、村下(むらげ)と呼ばれる技術者が、一子相伝で弥生時代から伝えてきた日本独自の製鉄術をいう。この鉄の純度は99%。現在でも世界最高レベルの純度をもつといわれている

▼材料づくりから高い眼識、技術力が要求された日本刀。その技術者たちの純粋な想いが時代を超えて日本刀を輝かせているのだろう。「武士の魂」というより「技術者の魂」にも見えてくる。後に、実は刀の持つ道具としての美しさだけではなく、本物の職人の技に感動していたのだと気付いた。(前・HM)

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