コラム

2005/11/09

記憶の空と生まれ変わる街(前・NK)

2005.11.09 【記憶の空と生まれ変わる街】

▼千葉県千葉市中央区に完成した「フクダ電子アリーナ」(蘇我球技場)の柿落としに行った。この「フクアリ」は、医療機器メーカーのフクダ電子が命名権を取得したサッカー専用スタジアムだ。久しぶりに蘇我駅で下車。懐かしさと緊張がじわじわとこみ上げてくる

▼蘇我は筆者が学生時代を過ごした街。国道16号より海側の夜空は、ぼんやり赤く、時にほの白かった。一人暮らしを始めた当初、心細さも手伝って気味が悪く感じられた。その後、製鉄工場が24時間稼働しているから、夜でも空が明るいのだと知った。以来、働いている人の気配を感じられるような気がして、怖さが安心感に変わったのを記憶している

▼卒業以来で訪れた街は、すっかり様子が変わっていた。「鉄冷え」で空き家になっていた製鉄会社の社宅や空き地は無くなり、テナントビルやマンションに。バスやトラックが通るたびに自転車を止めないといけなかった道路には、両側歩道が整備されている

▼既に夜空を焦がしていた工場の一部は取壊され、大型ショッピングモールが建設されていた。跡地にはJEFユナイテッド千葉・市原のホームスタジアムが隣の市原市からやってきた

▼スタジアムへ足早に急ぐ人並みを歩道橋から眺めると、街は大きな体で、人はそこを流れる血、そんな気がしてきた。体が育てば、血流が活発になる。その逆もしかりだろう。街が変わり往来が増え、人が来るから街が再生される。街の面影が記憶から遠ざかっていくのは、嬉しくもあり寂しくもある。せめてこれからも、海側の夜空を「フクアリ」の明かりと熱気が焦がしてくれることを祈っている。(前・NK)

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