コラム

2005/11/25

厳罰とその副作用(水・KK)

2005.11.25 【厳罰とその副作用】

▼11月月1日、東武野田線の普通電車を運転中の運転士が3歳の息子を運転室に入れたとして解雇されたニュースが波紋を呼んでいる

▼東武鉄道には「処分は厳し過ぎる」と約430件の抗議が寄せられた。しかし某民間ラジオ局の聴取者アンケートで「会社の処分は重過ぎ」51%、「クビは当然」49%と意見が真っ二つに分かれたのにはいささか驚いた。これが10年前、20年前だったなら、7対3、8対2くらいで「処分はやり過ぎ」と出たのでは。世論は厳罰を求める方向に向かっているのだろうか

▼社会学者の宮台真司氏によると、厳罰によって犯罪を抑制しようとする場合、その副作用をも考慮に入れなければと提唱する。例えば、駐車違反をした人を免許取消しにするとしたら明らかに違法駐車は減少するだろう。しかし職を失う人も続出する可能性も見逃せない。失業者の激増で治安は著しく悪化する。厳罰による効果よりも副作用のほうがはるかに大きいと言う

▼東武鉄道では、伊勢崎線の踏切死傷事故などから綱紀粛正に懸命なのだろう。運転士がぐずり泣き叫ぶ息子を運転席に入れていたのは次の駅に到着するまでのわずか4分間。発車時刻になっていたため外に出すことができなかったという。到着時刻に遅れた場合の乗客にかける迷惑と比べたとっさの判断とも思える

▼規則を遵守するのは当然だ。しかしそこに蟻一匹入る隙間もないというのはいかがなものか。ケース・バイ・ケースが一切許されず「何かあったら処分される」とする恐怖の中で働かざるを得ないとすれば、良い仕事は望めない。労使双方の損失になると思うがいかがなものだろうか。(水・KK)

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