コラム

2006/01/28

色褪せないもの(デ・TN)

2006.01.28 【色褪せないもの】

▼今年は18世紀の天才作曲家、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756〜1791年)生誕250年にあたる。モーツァルトと言えば、オペラ史上に残る名作を産む一方、かなりの奇行ぶりでも有名な人物。当時、彼の評価は低く、遺体は貧民用の共同墓地に捨てられるという事実は、天才と呼ばれる現在の評価からは考えられないことだ

▼今年は世界各地で彼に因んだ様々な催し物が行われる。その一つに、過去100年以上にわたって国際モーツァルテウム財団が保管していたモーツァルトの頭蓋骨を、親族とされる遺骨とDNA鑑定するというものがある。天才に対する興味はDNAにまで注がれるとは、本人にしたら迷惑な話しだろう

▼死後に真価が高まり天才という呼称がつけられることは多い。画家のゴッホなどいい例で、生前には絵が一枚しか売れなかったという話しは有名だ。本人達のことを想うと悲哀を感じるが、だからこそ天才と呼ばれる所以なのかと納得もしてしまう。天才は一般人が理解するには時間がかかるということなのだろうか

▼「少しも狂気を含まぬ天才などというものは絶無である」と哲学者アリストテレスは言った。異端の才には「狂気」がついてまわるものならば、当時の人々が理解に苦しむのも無理はないかもしれない

▼天才達のDNAは作品に宿り、決して色褪せることはない。悲哀や狂気に満ちた生き様を知るのも楽しい。展覧会や音楽会に行き、創作物を鑑賞する習慣は今後も続けたい。評価されなかったからこそ生み出せたであろう作品や狂気に触れることにより、豊かな感性を育みたいと思っている。(デ・TN)

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