コラム

2006/03/01

獣と人間の共存は(松・HK)


▼昨年12月からの大雪は、各地に甚大な被害をもたらした。犠牲者は戦後3番目に達し、豪雪地域の住民が頭を抱える状況は、文字通り異常気象である。日本に限らずこのような風雪水害のニュースは後を絶たない。温暖化やエルニーニョなど原因はあれこれささやかれているが、その根源を探ると人間の営みに関わってくるのではないだろうか

▼物が豊富になり、人々の暮らしも多様化して生活の範囲を広げていく。人と獣の境界線であった里山がなくなり、お互いが相手の生活領域に足を踏み入れるようになった。獣側にとれば、生きるに必要な食糧を求めて山を降りてくるのだが、一方の人間は、趣味や娯楽のため山へ向かう

▼かく云う筆者もその一人なのだが、山中で動物に遭遇すれば驚くのは両者一緒のはずだ。しかし、興味本位で自然に身を入れる人間にとれば、その中で暮らす彼等もまたその対象となる。身の危険を感じなければ近寄ってみるのも人情

▼だが、相手にとってはそうではない。見慣れない者が近づけば危害が及ぶと感じ攻撃に転じる。これは当たり前な自然現象だ。例えばカモシカはこちらが眼を離すまでじっと見つめ注意を怠らず、群で移動する猿は、先鋒が幹の天辺で警戒の雄叫びを上げる

▼そんな猿が、林道の法面を固めたコンクリートを一心に舐める姿を目撃した。炭酸カルシウムから塩分を摂っているのだそうだが、山の奥の人工物が野生の猿の生活の一部になっているのを不思議に感じたものである。熊に対するお仕置きや電気柵など昔のような住み分けが基本の考え方だが、何か共存の手立は無い物だろうか考えてしまう一コマだった。(松・HK)

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