コラム

2006/03/02

なぞなぞの答えは?(甲・CT)


▼以前住宅の取材をしていた時大工さんに教えてもらったなぞなぞがある。「法隆寺を建てたのは誰か?」学校の試験なら「聖徳太子」が正解だろう。しかしこの世界で正解は違うのである

▼2004年山梨県富士吉田市に富士山レーダードーム館がオープンした。気象衛星などに役目を引き継ぎ体験学習館として生まれ変わったのだ。「台風監視の砦」として富士山に設置されたこのレーダー建設工事は困難を極めたことでも有名である。後にこの施設は伊藤庄助・工事現場監督の「一生に一度、子孫に誇れる仕事をしよう」と仲間を励ました言葉通り、技術界のノーベル賞「IEEE賞」を受賞した

▼最近「東京」という単語がキーワードになっているという。歌詞やキャッチコピーにも多用されている。そしてその街のシンボルとして役割を担っている東京タワー。ベストセラー小説の題名にもなるほど未だ多くの人を魅了し優美な姿を称えるこの塔を建てたのは全国から集まった腕自慢の職人達だ。前述のなぞなぞの答えはここにある

▼後世に残る偉大な建物を造ったのは権力者ではなく、すばらしい技術と信念を持った他ならぬ名工たちなのだ。彼らの情熱が、誠実さが感じられるからこそ時代が変わっても色あせず存在し続けるのであろう。まさに「子孫に誇れる仕事」をした証である

▼建設業界では世間を騒がす嘆かわしい事件が後を絶たない。建物に罪はない。先人達に学び、今改めて現場を見直してもらいたい。「損得だけを計らず意義のある仕事とは何か」。」問われているのは作り手側は元より発注者も含め「プライド」ではなかろうか。(甲・CT)

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