コラム

2006/03/04

大きな木が無くなって(前・NK)


▼この時期、うちの小さな庭にやってくる野鳥たちを観察するのが楽しみだ。来訪のお目当ては、冬場も真っ赤な実をつけるピラカンサ。野鳥に食い荒らされぬようにと、木にネットをかけている家も多いが、もともと勝手に生えてきたので拙宅では別段気にしていない。むしろ食べてもらうことで、種がどこか遠くへ運ばれるのではと期待している

▼スズメ、オナガ、ヒヨドリ、ムクドリ、シジュウガラといったおなじみの顔ぶれにくわえ、ここ数年はジョウビタキ、ツグミ、コゲラと仲間がどんどん増えている。ピラカンサが美味しいからかと、呑気に考えていたが、実際は違うことに気がついた

▼野鳥は休憩所である「木」を失って、拙宅の庭へ立ち寄るようなのだ。天敵である猫を飼育する人家でも、仕方がないらしい。通常、鳥は餌場や縄張りを巡回する。飛び続けるのではなく、ところどころで羽を休めながら一日を過ごす。小鳥が休憩するのは大きな木が多い。天敵から狙われにくいからだろう

▼だが下屋のある大きな農家が中心だった集落は振興住宅地へと様変わり、敷地に生えていたカシやヒノキといった灌木も伐採されていった。竹林も減った。そういえば、太さが一抱えはあったナラの木も、隣家からいつの間にか無くなってしまった

▼庭に来る野鳥が近い将来、絶滅危惧種になるかもしれないと不安がよぎる。あのトキも、かつては身近な鳥だった。身近な現象に対し、小さな危機意識を持って過ごさないと様々な動植物が確実に消滅していく。そして、いつか人間自身が消える存在になるかもしれないと身震いするような焦燥感を覚えた。(前・NK)

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