コラム

2006/03/11

15分だけの面会(甲・EO)


▼ソフトバンクの孫正義氏を知らない人はいないだろう。しかし、その生い立ちは過酷なもので、成り上がりのIT経営者とは大きく異なる

▼同氏は、佐賀県に在日韓国人3世として誕生した。その後、一家は北九州市に移るが、幼稚園時代には「この朝鮮が」と言って石を投げつけられたこともあったという。小学校時代には、教師を目指すものの国籍が日本人でないと公務員にはなれないという差別を受ける

▼中学校の途中で一家は福岡市に引っ越す。東大コースの名門高校に入学するためだ。名門高校に入学し東大合格圏にいた同氏だが、1か月のアメリカ研修旅行が、その後の運命を大きく変える。アメリカでは、様々な人種が住んでおり、それらが皆、楽しく生きていることを見て人種差別はちっぽけなものだと実感したのだった

▼これを契機に高校を中退しアメリカ行きを決意した同氏は、当時、日本マクドナルド社長だった藤田田(ふじた でん)氏を東京に訪ねた。藤田氏は、1週間続けて毎日訪れる同少年に熱意を感じ、15分だけ面会した。その時に尋ねたのが「これからアメリカに行くが何を勉強したらいいのか」。藤田氏は「これからはコンピューターの時代だ」と告げる。この出会いが無かったら今のソフトバンクは存在していなかった

▼アメリカに渡ってからは大学に入学、早々に2つの経営に乗り出している。日本に帰って日本国籍を取得したのは34才の時。インターネットブロード料金を世界最低水準に引き下げ、今や世界一のインターネット先進国となる基礎を導いてきた。昨年には携帯電話周波数を獲得、同分野での価格破壊も期待したい。(甲・EO)

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