コラム

2006/03/15

繰り返し伝えたい(長・EM)


▼燦々とそそぐ陽がこんこんと降った雪を溶かし、恐々と過ごした日々を除々に思い出へと変えてゆく。延々が永遠でないことに気付くのは往々にして事の終わりが見えた頃。ただし、過ぎれば忘れるのが常だから、大切なのは「繰り返すまい」と「繰り返すこと」

▼3度目の冬を越した娘は、目下「ナニ?」を連呼する。疑問に駆られてか、はたまた繰り返しの掛け合いが面白いのか。会話は堂々巡りで、遅々として進まない。辟易することもしばしばだが、世相に照らせば、これ程までにしげしげと物事を見詰めることも必要か

▼冬の訪れとともに降って湧いた構造計算書偽装問題では、繰り返さないための施策づくりが進められている。国土交通大臣の諮問機関がこのほどまとめた中間報告には、一定規模以上の建築物について第三者機関による審査の義務付けや、中間検査、罰則強化、瑕疵担保責任の充実といった再発防止策が並ぶ

▼他方、日本建築士会連合会が推進する専攻建築士制度は、来年度中にほぼすべての建築士会で実施の見通しとなった。医師が外科、内科等と専門を表示しているように、設計、構造、環境設備など技術領域や得意分野を明示する同制度は、近い将来、建築士のスタンダードとなるかも知れない

▼「悪事千里を走る」の諺どおり、今回の事件で住宅や建築物に対する国民の不安は瞬く間に広がった。不信感を拭うには法整備はもちろん、こうした業界の自助努力を周知することも不可欠。悲しい哉「好事門を出でず」。その歩みは娘とのやり取りほどに遅いとしても、切れず絶ゆまず、繰り返し伝えることで、信頼回復の一翼を担いたい。(長・EM)

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