コラム

2006/03/31

空間を利用する権利(本・HK)


▼戦後日本の建築動向として最も象徴的なのが超高層ビルの林立だ。1961年の特定街区制度の施行により、30階を超える高さの建築が可能となった。これを受けて、1968年に竣工したのが日本初の超高層ビル、霞が関ビルである。法規では60m以上、一般には100m以上のビルを超高層ビルと呼ぶ

▼日本橋三井タワーは、地上200m、39階建ての超高層ビル。通常では日本橋周辺の土地に高層ビルを建てることはできないが、空中権を利用し、隣接する三井本館の空中の容積をもらうことにより建設が可能となった。この空中権がもらえなければ、15階程度のビルしか建てることはできなかった

▼空中権とは、土地上の空間を利用できる権利のこと。低層ビルを建設した場合など、あらかじめ指定された容積率を使い切らずに余らせた場合、その残りの容積率を隣接地に転売することができる。あたかも空間を利用する権利があるように見えることから空中権というようになった。空中権の売買は、すでにビジネスとして展開を始めている

▼空中権の問題として、町並みが損なわれる恐れがあることなどが挙げられる。自宅の周辺で大規模ビルやマンションの計画があると、空中権売買の話になる。地域住民に対して空中権を知ってもらい、国などとともに都市計画をしっかりと実施していくことが肝要となる

▼都市開発の増加に伴い、空中権の利用は活発化している。商業地域に暮らす人々にとっては空中権の売買はいつ起きてもおかしくない状況だ。さて、今見ているあの空にも価値はあるのだろうか。今後の都市空間や開発動向等に注目していきたい。(本・HK)

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