2006/04/19
残された人の悲しみ(前・NK)
残された人の悲しみ
▼日一日と緑が濃くなってきた。親元を離れ泣きじゃくっていた娘も保育園に通いはじめ1年が経ち、近頃はすっかり生意気なことを口にするようになった。保育士と一年を振り返る懇談会があり出席してみることに。普段見られない子どもの様子を収めた写真や四季折々の製作品などが渡され、親同士がその成長の軌跡を楽しんでいた
▼突然のことだった。一人の母親が泣き出し保育士に土曜日も子どもを預かってほしいと懇願し始めた。御主人を事故で亡くし、うつ病と診断され、子どもを重荷に感じてしまう自分を見つめなおしたいというのだ
▼御主人は、仕事中にクレーン車が吊っていた荷物の下敷きとなり、大腿骨骨折の出血多量で死亡したという。突然、思いもよらない知らせを受けた時の驚きや悲しみは言葉で言い表せないだろう。母親の心情を思うだけで胸が締め付けられ、涙をこらえきれなかった
▼全産業における死亡労働災害で建設産業が占める割合は依然として高い。建設業を営む事業主らが会員になって組織された建災防の各支部において、講習やパトロールが強化されている。家族の下に毎日、無事に帰れることは当り前のようだが、実はとても価値あることだ。日々の認識が問われるところだ
▼犠牲者とその家族、肉親や友人の悲しみと、悔しさ、怒り、無念などは計りしれない。もう一度、過去の労働災害を真摯に受け止め、現場の何処にどの様な危険が潜み、事前の安全への配慮はどうすべきであったかを学び、同じ過ちを二度と繰り返さないよう真剣に考えていかなければならない。これ以上、悲しむ人たちを増やさないためにも。(前・NT)