2006/05/08
トキに勇気づけられる(新・YY)
▼新緑の色も鮮やかになりすっかり春らしくなった。今年も佐渡トキ保護センターからひなが誕生したとのニュースが届き始めた。9個のペアから40個ほどの産卵が確認され、うち4月下旬までに1個の卵からひなが孵化している
▼日本最後のトキは「キン」が死んだことにより絶滅してしまった。しかし平成11・12年に中国から贈られた3羽のトキをもとに個体数は毎年順調に増え続け、トキの数は平成17年には80羽となっている。このままのペースでいけば今年の産卵シーズンを終える頃には100羽を越す勢いだ
▼国は、平成15年にトキの野生復帰計画として「2015年には小佐渡東部に60羽のトキを定着させる」という目標を立て、同17年には野生復帰のための訓練施設建設にも着手している。一方で民間のNPO団体による活動も活発だ。トキの野生復帰に向けての環境づくりとして営巣木・ねぐらの保全、餌場の確保などが精力的に行われている
▼かつてトキは棚田環境における食物連鎖の頂点に立っていた。水田やその周辺に生息するドジョウやサワガニなどの小動物を食べ、近くの森をねぐらとしてきた。しかし現在では里山や棚田の管理放棄によりその環境はトキにとって棲みにくいものになっている
▼里山の鳥であるトキは、ずっと昔から人間の生活と密接に関わり暮らしてきた。急速に変化する人間の暮らしを野生動物が受け入れる事は難しい。便利な暮らしと引き換えに失われてしまったものはトキに限らず数多くある。しかし毎年この季節に一生懸命卵から出てくるひなの姿を見ると、少しくらいの不便は我慢しようかと勇気づけられる。(新・YY)